相続のトラブルはどの家庭にも起こりうる?
多くの人は、遺産相続のトラブルは自分には全く関係がないと考えているでしょう。
「遺産相続のトラブルなんて、資産家だけの話でしょ。うちは一般家庭だから。」
「預貯金は300万円だけしかないし、相続税もかからないから関係ないよ。」
「分ける遺産なんてないから、遺言書なんて書く必要はないな。」
と考える方が多いのではないでしょうか。
最近では、新聞やテレビ、雑誌などで遺産相続の特集などがよく取り上げられ、遺産トラブルの事例などをご覧になる機会も多くなってきました。しかし、まだまだ自分には関係ないと、相続の準備をしない方も多いかと思います。
相続人に引き継がれる財産には、土地・建物などの不動産、自動車、現金、預貯金、貴金属類、有価証券などの「プラスの財産」。また、それだけではなく、借金、負債、さらには損害賠償責任などの「マイナスの財産」も含まれます。
大半の人が多かれ少なかれ、このような財産をお持ちかと思います。
残された財産は、たとえ少ない財産でも、残された人に引き継がなければなりません。
つまり、相続はどのような家庭にも起こる身近な問題なのです。
さて、実際に、裁判所の統計データを見てみましょう。
平成28年度の全家庭裁判所における遺産相続事件(うち容認・調停成立件数)の総数は、7,485件、うち「5,000万円以下」は3,177件と最も多くなっています。次いで、「1,000万円以下」が2,476件、「1億円以下」が914件、「5億円以下」が538件、「5億円を超える」が42件となっています。
遺産総額5,000万円以下の割合が、75%を占めているのです。
相続税がかからないから関係ないと、相続の準備を何もしてこなかった結果かと思われます。さらに、第三者の調整役がおらず、家族のみで遺産相続の手続きを進めるため、感情的になり、こじれる場合が多いのです。
一方、遺産が億単位ある家庭は、25%となっています。全体の数が少ないこともありますが、生前から弁護士や税理士などの専門家に依頼し、生前贈与や有効な遺言書を作成したり、事前に色々な準備をしているため、トラブルに発展することも少なくなっています。
なお、遺産相続事件の総数7,485件のうち、6,413件が不動産を含む遺産相続事件となり、全体の86%を占めています。
不動産は、分割がしにくい財産になります。現金、預貯金などは、1円単位できれいに分割することができますが、不動産は分割するのが難しく、トラブルになりやすいのです。
特に、マイホームなどの不動産をお持ちの方は、事前にきちんと相続の準備をしておいた方が良いでしょう。
このように、たとえ遺産が少ない場合でも相続は発生しますので、きちんと準備をしておくことが必要です。遺産相続トラブルは資産家だけが直面する問題ではありません。